東和クリニックコラムvol.6

みなさん、こんにちは。
今回は、東和クリニックの児玉先生に足関節の捻挫について書いていただきました。ぜひご覧ください。

東京オリンピックは間もなく終了致しますが、お仕事の合間に試合経過を確認するだけではなく、夜に結果をチェックしたりハイライトを見ている方も多いのではないでしょうか?
さて、世界のトップ選手が競うゲームを見て、プレーを真似してみたり、久し振りにテニスをしようと思い立つ方も多いかもしれません。スポーツを通じて健康で楽しい生活を送ることは非常に重要なことですが、ケガには十分に注意をしていただきたいと思います。

★テニスで怪我をしやすい部位

以前のブログにも紹介いたしましたが、ある研究によるとテニス選手が最も痛める体の部位は膝だと言われています。ただし、大きなケガに限った場合は、足関節(足首)が最も多いとする研究もあります。
40歳以上のテニスファンであれば、モニカ・セレシュという選手を覚えていると思います。彼女はテニスの4大大会シングルスを9度も制して殿堂入りを果たしているほどの名選手でした。
しかし、本来であればまだまだ凄い成績を残すポテンシャルがあったと言われていますが、そうならなかったのは試合中に暴漢に襲われるという事件と右足関節の度重なるケガが原因と考えられています。セレシュは1990年のある試合で右足関節の内反捻挫(足を内側に捻るようにして受傷し、外くるぶし側の靱帯を損傷)しました。わずか15歳で前年の全仏でベスト4に進出した新たなスターのケガの瞬間は写真付きで報道されて世界中に衝撃を与えることになりました。彼女の右足は内向きに巻き込まれるようにあり得ない角度になっていたのです。

★怪我の原因は?

なぜ、世界のトッププレーヤーがこのようなケガをしてしまったのでしょうか?
それは、テニスという競技は試合中に急激なダッシュとストップを頻回に繰り返すため、足関節に非常に強い捻れが生じさせるためなのです。しかも、人間の足は外くるぶしと内くるぶしの高さが異なる(外くるぶしの方が低い)こと、踵の上にある距骨の形状から足先を伸ばすと足が左右に振られやすくなるという解剖学的な特性があります。そのため、急激に大きな荷重が掛かると足関節は足先を伸ばしながら内側に巻き込むような捻挫をしやすくなっているのです。


★捻挫の種類

さて、この捻挫というケガは単なる靱帯損傷だけではない可能性があることをご存知でしょうか?
日本のある研究では、スポーツによる足関節捻挫によりリハビリテーションを要した患者さんのうち、約38%に骨損傷が認められたと報告されています。このうち半分は外くるぶしの剥離骨折でしたが、残り半分はくるぶしの完全な骨折が存在していました。骨損傷が認められた患者さんの平均年齢は47歳であったのに対して、靱帯損傷のみであった患者さんは平均30歳という具合であり、年齢によって骨折が合併しやすい傾向が認められており、中高年のテニスプレーヤーは骨折を合併しやすいことがわかっています。 一般的に損傷靱帯と骨損傷の治癒期間は異なり、前者は6週間程度で後者は6から8週間とされています。そのため、骨損傷の存在の有無で固定などの適切な治療やリハビリテーションを行う期間や内容が異なってくるわけです。きちんとした治療のためには、病院を受診して正確な診断をくだす必要があるのです。

確かに多くの足関節捻挫は自然と治癒します。しかし、中には受傷してからかなりの時間が経過したとしても歩行時に外くるぶし周囲の痛みや不安定感が残存することもあります。これは外くるぶし周囲の靱帯や軟部組織の損傷による慢性的な炎症や組織修復過程における瘢痕化による機能不全が原因と考えられる足根洞症候群と呼ばれる後遺症です。足根洞症候群を発症する患者さんの約7割はケガが放置されたり適切な診断と治療を受けられなかったと考えられており、捻挫を侮ってはいけないことが理解できるかと思います。

★我慢せずに病院へ

足関節捻挫を受傷した患者さんのうち医療機関を受診するのは7から10%程度でしかないというデータがあり、逆に言えば多くのケガをしたプレーヤーが適切な診断を受けることなく、かつ将来的な後遺症のリスクを抱えていることになります。
生涯スポーツとしてテニスを楽しむためには、万全の体調管理が不可欠です。足を捻って痛みを感じた場合は、我慢することなく早期に医療機関を受診してしっかりとした治療計画を立ててもらってそれを遵守することを忘れないようにしてください。

東和クリニック浦東院では、テニスを楽しむ皆さんのために積極的にスポーツ外傷の診断と治療を行っていますので、お気軽にご相談ください。

東和クリニック 浦東院勤務

Dr.児玉 貴光  (Kodama Takamitsu)

自治医科大学医学部卒業
市立輪島病院内科勤務
公立能登総合病院 
救命救急センター医長
聖マリアンナ医科大学 救急医学助教  

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